2004年のハロウィンの夜、Paragon Cityにおりた夜の帳は、全市を稀に見る大混乱の坩堝に陥れた。何者かが盗み出した恐るべき魔法書のパワーにより、この日のParagon Cityは一日中闇に包まれたのだ。そして街中のドアというドアから、どこからともなく怪物達があふれ出し、町の中を我が物顔でのし歩く有様となった。
幸いにしてハロウィンの終わりとともにこの混乱は収まり、Paragon Cityには再び希望の夜明けが訪れた。・・・いや、正確に言えばただ一箇所を除いては、だが。
タロス島の東に位置するダークアストリア。かつてはParagon
City随一の金融街スティール・キャニオンや、新興企業ひしめくタロス島のベットタウンとして栄え、牧歌的な商業センターとして繁栄を極めていたこの地
は、ここ数年一日中暗い霧に覆われ、陽の光のさすことのない死者の町と化しているのはよく知られた事実だろう。
そもそもダークアストリアはRikti戦争にあたっても大きな損害を受けることもなかった、幸福な地域だった。街のはずれにはモス墓地(Moth
Cemetery)と呼ばれる大きな公園墓地があったが、これとて街の静かな雰囲気をかもし出すのに一役買っていたくらいで、この地の価値を下げるもので
はなかったのだ。(察するに東京の青山墓地のようなものだったのだろう)
しかし実はこの墓地には誰も想像だにしない大いなる災いが眠っていたのだ。
その事実を最初に知ったのはRikiti戦争後急速に台頭したブドゥー教系のカルト教団、Banished Pantheonだった。
彼らはどうやって知ったのか、この墓地に古代の忘れられた邪神Motが眠っていることを突き止めたのだ。そして邪神Motは彼らの崇拝する邪神より太古の神の一人であり、しかも彼らの神々をはるかに上回るパワーをもっていることがわかったのだ。
Banished Pantheonの指導者ルゲブ(Lughebu)はMot神とそれに従う神々をその長き眠りから解き放つことを決断した。そして彼らは教団の全精力をもってダークアストリアに殺到したのだった。
この時Paragon市当局やヒーロー達はRikiti戦争の直後で疲弊しきっており、この攻撃を食止める力はなかった。又巨大なモス墓地の存在も死者を蘇生してゾンビとして使役するBanished Pantheonに有利に働いたことは疑いないだろう。
結局ヒーロー達はこの地を放棄し、その境界線にWar Wallを築いてそれ以上のゾンビの侵攻を食止める以外手立てはなかったのだった。
あとに残されたのは凄まじい破壊と殺戮だった。街には呪術師とゾンビの軍団が溢れ、大地は引き裂かれ、そして彼らの恐るべき死と闇の呪術がこの地を覆った。結局この地の住民のほとんどがBanished Pantheonの邪神復活の為の犠牲となったのだ。
だがそのあまりに巨大な犠牲も結果的には空しいものだった。Banished Pantheonのあらゆる努力に関わらず、肝心の邪神Motがその長きにわたる眠りから目覚めることはなかったのだから。
かくてダークアストリアでは、Banished
Pantheonが邪神Mot復活の手段を求め、今なお新たな生贄を求めて街を占拠しつづけている。そしてかつてこの街に住み、邪神復活の犠牲となった住
民達は、永遠に日の光を見ることのないこの街の闇の中を、今日も又、さ迷い続けているのだ。